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自己破産

1 破産に至るまで

1 破産に至るまで

「借金の返済がかさみ,生活費をぎりぎりまで減らしているのに,毎月利息分だけを返すのがやっとで,このままでは普通に生きていくこともできない・・・。どうしたらいいでしょうか。」という相談を受けることがよくあります。
まず検討すべきは,本当に生活費をぎりぎりまで減らしているのか,無駄な支出はないか検討し,借金を返すことができるのであれば返さなければならないことは言うまでもありません。
しかし,「借りたものは返さなければならない。」と無理をして返済を続けていると,それほどたたないうちに,他の金融機関から借りては返すという自転車操業状態に陥ります。一度こうなってしまえば,宝くじでも当たらない限り,自然に自転車操業状態を抜け出すことはできません。やがてヤミ金に手を出し,激しい取り立てにあって夜逃げや自殺といった悲惨な事態を招くことさえあります。
 夜逃げすることなく,合法的に自転車操業状態から脱するために,破産という制度があります。

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2 免責

(1) 免責とは

(1)免責とは

破産法にはいろいろな制度があり研究すると非常に面白い分野ですが,ここでは,消費者破産の場合で最も関心が高い「免責」について検討します。

「免責」(破産法248条以下)は,理論的には「破産」とは異なる制度です。専門書では,免責は英米法に由来し,破産は大陸法に由来する起源が異なる制度であると説明されています。つまり,「破産はできても免責は得られない。」ということがあるということです。

通常,破産申立と同時に免責許可申立てをします。意識して両者が別に扱われることはほとんどありません。免責許可決定がなされると,債務を支払う義務を免れます。

(2) 免責不許可事由

免責許可申立てがあると,裁判所は,免責不許可事由がない場合には,免責許可の決定をします(破産法252条)。免責不許可事由は,法律上11個挙げられています(同条1項1号から11号まで。)。理解のために極めておおざっぱにまとめますので,正確に知りたい場合には,条文にあたられてください。

①破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと
②破産手続の開始を遅らせる目的で,不当に債務を負担したこと
③特定の債権者に利益を与える目的で特定の債権者にのみ債務を返済したこと
④浪費,賭博で借金の返済ができなくなったこと
⑤詐術を用いて信用取引をしたこと
⑥帳簿等を隠滅したこと
⑦虚偽の債権者名簿を提出したこと
⑧破産手続において,裁判所の調査に協力しないこと
⑨破産管財人の職務を妨害したこと
⑩過去7年以内に免責をうけていないこと

通常の自己破産のケースでよく問題となるのは,③と④です。注意点をみていきます。

③特定の債権者に利益を与える目的で特定の債権者にのみ債務を返済したこと

破産しようという事態になっている場合,銀行は言うに及ばず,消費者金融ももはや貸してくれない状態になっています。そこで,親族からお金を借りて,他の債権者に返済を続けてきていることがよくあります。やがて親族も貸してくれなくなり,他の債権者の返済にまわるようなお金はないものの,親族にだけは迷惑をかけられないといって,親族にだけ借金の返済をするようなケースです。
他には,取立てが厳しい債権者にだけ返済をしているケースも見られます。
「親族にだけは迷惑をかけられない。」という状態に陥る前に,弁護士に相談されて破産されるのがベストです。もし,そのような状態になってしまった場合には,親族によく説明して,破産債権者として裁判所での破産手続によって免責を受けますが,破産手続がすべて完了した後,迷惑をかけられない債権者にだけ返済をすることは可能です。
もっとも,そのようなことをすると,また借金に借金を重ねる事態になる可能性が高く,また借金地獄に戻ってしまう可能性が高いので,よく弁護士と相談して下さい。

④浪費,賭博で借金の返済ができなくなったこと

浪費や賭博で遊んでおいて,破産して債務を免れようというのは虫が良すぎる話だという点で,理解しやすいでしょう。
下関での経験上,パチンコ,競艇といったギャンブルや,自動車改造費用,クラブ等での飲み代が浪費にあたるとして免責不許可になることがよくあります。
もちろん,ギャンブルや浪費といっても,収入から見て社会的に相当な範囲であれば,免責不許可事由にあたるという訳ではありません。
もし,ギャンブルや浪費で破産状態になった場合,どうすれば良いのでしょうか。
1つは,破産せず,任意整理や民事再生という形で,少しずつ返済していくことです。
もう1つは,「ダメ元」で自己破産を申し立てて,裁判所による裁量免責(破産法152条2項)を求めることです。裁量免責とは,免責不許可事由がある場合であっても,裁判所は,一切の事情を考慮して免責をすることができるという制度です。この場合,免責が得られるかどうかは裁判所のさじ加減一つになります。どの裁判官が担当裁判官になるかによっても大きく変わりますので,「運」の要素も入ってきます。

3 非免責債権

3 非免責債権

免責が認められた場合であっても,一定の債権は免責されませんので,一生かけて少しずつでも支払っていかなければなりません(破産法253条1項1号から7号)。詳細は条文をご確認下さい。

①税金
②悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
③故意又は重大な過失により人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
④親族関係にかかる一定の請求権(婚姻必要,養育費など。)
⑤雇用関係に基づく使用人の請求権(給料等)
⑥破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権
⑦罰金

通常,破産を検討する段階の債務者は,税金や国民健康保険の滞納があることが多いです。破産手続外でお客様ご自身に市役所など租税公課の担当部署と協議していただいて,少しずつでも分割して支払っていくことになります。

4 破産に伴う制限

 破産をためらう相談者の方が一番ひっかかるのが破産に伴ってどのような不利益を被るか心配だというところのようです。
 破産に伴う不利益は,資格制限と事実上の不利益に大別できます。
 法律上の資格制限には,我々弁護士や税理士など,いわゆる「士業」と言われる国家資格において,破産者でないことが要件とされています。また,個別の業法において制限されるものの代表は,警備員や保険の外交員などです。
 我々士業は他人の財産に関する仕事をするため,破産するような者には適性がないという法の趣旨はよく分かりますし,他人のお金を触る機会のある警備員や保険の外交員が破産するほどお金に困っていれば,いつ横領するか分からないので危険だというのも理解しやすいところでしょう。法律ではなくても,就業規則等により社内的に規制をかけている会社もあります。
 ですが,こうした規制のない通常のサラリーマンやパート,アルバイトをするには,破産しても何ら影響はありません

 他には,財産を身ぐるみはがされるとか,戸籍に記載されて一生消えないなどとデマが流れていた時代もあったようですが,嘘です。
 財産は,下関の裁判所の運用では50万円程度までは手元に当然残りますし,差押禁止財産(生活必需品,年金など。)は破産しても失われません。破産管財人が付された場合には,99万円までは自由財産許可申立という制度を使って手元に残すことができる制度があります。
 また,戸籍には破産しても記載されません。官報には掲載されますが,官報を隅から隅まで熟読する暇な人はいません。

 事実上の不利益としては,ブラックリストに乗り10年程度は新たな借り入れができなくなりますが,破産するような時には既に何か月も支払いが遅れているか,少なくともそうなることは間近の状態です。ブラックリストには既に載っているか,載るまであとわずかなので,いまさら破産によってさらに不利益にはなりません
 自宅不動産を失ったり,連帯保証人に請求がいくということもデメリットと言われることがありますが,債務を支払えない以上,遠からず抵当権が実行されたり,債権者から差押がなされたり,連帯保証人に請求が行きます。ですので,それ以上悪くはならないと言う意味で破産のデメリットとは言えないでしょう。

結局,資格制限を除いては,破産の最大の障害は,「破産したくない!」という債務者の方の心理的障害といえます。破産することに不安がある場合には,どのような点が不安なのか,不安を解消できるまで弁護士に相談されてみることをおすすめします。