片山弁護士のチラシの裏
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廃業

廃業

1 いつ廃業をするか

いったん起業すると、従業員、取引先、銀行その他大勢の利害関係人が発生します。戦の勝敗は兵家の常であり、起業した会社の事業がうまくいくこともあれば、うまくいかないこともあります。しかし、利害関係人にかける迷惑を最小限にすることは、起業した人の責任と言えます。

まずは、誰かに事業を承継してもらうことを検討すべきでしょう。会社の経営者が入れ替わっても(株式の譲渡など。)、たとえ会社がなくなっても(合併など。)、会社の事業が存続すれば利害関係人に及ぼす影響は最小限にとどめられます。

しかし、業態的にそもそも先行きがない場合(IT革命によって多くの業態が変化を余儀なくされています。)や、承継する人物が見つからない場合には、廃業を検討することになります。

とはいえ、廃業のタイミングを間違えれば、赤字は一層膨らみ、取引先に及ぼす損害が大きくなります。
加えて、廃業しても経営者は一人の人間として生きていかなければなりませんので、その個人財産をすべて会社の運転資金に回して一文無しになってしまう前に会社を辞める必要があります。タイミングを間違えなければ、取引先に再雇用してもらうことも選択肢に入ってきます。

ここで最悪の事態=破産する場合を考えてみましょう。  破産するためには、法人分で200万円(破産申立費用100万円、裁判所への予納金100万円。)、代表者個人の破産で100万円(破産申立費用50万円、裁判所への予納金50万円)程度かかります。
つまり、300万円の資金がなければ、破産すらできないということです。 逆に言えば、手持資金が300万円以下になる前に破産を決断しなければなりません。

中小企業の経営者は、えてして頑張りすぎて手持資金が空になるまで営業を続けてしまいがちです。そうなると破産もできず、夜逃げ同然に会社をたたむことになり、取引先にも従業員にも多大な影響を与えることになります。

廃業するにしても、事業承継するにしても、手遅れになる前に実行しなければなりません。

2 債務超過ではない場合の廃業

会社の保有するすべての財産をすべてお金に換えれば、会社のすべての債務を返済してもあまりがある場合のことです。通常、我々が廃業と言う場合には、この類型を指します。

この場合には、法的には特に大きな問題は出てきません。効率よく会社の保有する財産を処分し、そのお金で順次取引や銀行の債務を返済していけば足ります。
あとは、行政庁の許認可や、社会保険・厚生年金の関係で廃業届を出し、会社の清算登記を済ませることになります。これらは、代表者ご自身ですることもできますが、行政庁の関係は行政書士、社会保険・年金の関係は社会保険労務士、登記の関係は司法書士に依頼することで、より適切に行うことができます。

取引先への挨拶回りなど、弁護士を代理人に立てるよりもご自身でされたほうがうまくいく場合もあります。

今まで人生をかけて切り盛りしてきた会社を切り売りするのは、さぞ辛いことと想像できます。弁護士など専門家に依頼された方が、その点割り切って進めることができますし、破産管財人の経験が生きる分野ですので、弁護士に依頼されることも検討してみてください。当事務所で廃業のご依頼を受ける場合には、代理人として、債権者先との交渉をし、財産を処分しつつ、許認可や年金、登記はそれぞれ行政書士、社会保険労務士又は司法書士と連携しながら行いますので、個別に専門家を探す手間を省くことができます。

3 債務超過の場合の廃業

(1)債務超過が小さい場合

(1)債務超過が小さい場合

いわゆる債務整理(任意整理)を行います(個別の交渉ではなく、中立的第三者を交えるADRもありますが、法的性質は任意整理の変形です。)。会社財産を処分して金銭化する一報で、債権者と交渉し、債権者の同意を得て債権カット又は返済スケジュールの変更(リスケ)をとりつけていきます。会社財産の不足額は、個人資産を提供したり、廃業後の収入から払っていくことにしたりして債権カットを伴わない場合には、債権者も合意してくれることが多いでしょう。

こうした債務整理では、弁護士は、代理人として債権者と交渉することができます。弁護士資格がなければ、代理人として交渉することは非弁行為として違法になりますので、しかるべく弁護士に依頼されてください。

(2)債務超過が大きい場合

もはや交渉で債権者が債権カットに応じてくれる可能性は、まずありません。
こうなっては、破産や民事再生といった法的整理手続をとることになります(会社更生手続もありますが割愛します。)


ア 破産は、裁判所によって選任された破産管財人(弁護士)が、会社の財産をすべて処分してできた財産を、法律に定められた順位に基づいて、債務に支払っていく手続です。破産手続の終了により、会社はすべて消滅します。

私の経験上、配当される金額は、債務額の数パーセントからせいぜい10%くらいです。取引先に多大な損害を与えますが、法律によって定められた手続ですので、債権者としても(しぶしぶ)納得せざるをえません。

イ 民事再生は、債務の大半を免除してもらった上で、免除されなかった債務を3年から5年かけて支払っていく手続です。
会社が残ってしまうため、廃業とは関係ないと思われるかもしれません。
しかし、民事再生をして多額の債務が消滅すれば、会社の買い手が現れる場合があります。また、会社組織ではなく、個人事業者の場合は、住宅資金条項を利用することで自宅不動産だけは手放さないことができる場合があります。

これらの破産や民事再生といった裁判所の法的手続の利用は、弁護士が最も得意とする分野です。

4 廃業を弁護士に依頼する利点

廃業を弁護士に依頼する利点

弁護士は、廃業の究極的形態である破産手続にしばしば携わっています。破産を申し立てる側のこともあれば、破産管財人の側のこともあります。そのため、廃業業務をする際にも、常に破産手続であればどうなるかを念頭に置いて業務に当たります。

会社の財務状況が悪化してから会社財産を贈与したり、一部の債権者のみに弁済したりすれば(偏波弁済)、破産手続において否認されます。また、全部の債務を返済できない場合に、返済の順序を間違えると弁済を否認されることにもなります。そうなると、なけなしのお金をさらに作らなければなりません。

弁護士は、破産管財人として、日常的に否認されそうな行為に注意を払っています。怪しいコンサルタントの自称専門家は、平気で否認される行為を提案することもありますが、損をするのは自称専門家ではなく、経営者自身です。
弁護士であれば、任意整理交渉が途中で頓挫した場合、速やかに破産手続に移行させることができます。そこで、任意整理交渉においても、「この案をのまなければ破産しますよ。破産したら配当は○円くらいですが、この案に応じてくれれば×円返済できますよ。」という押し方が可能です。